谷川道子ブログ

東大大学院修了(ドイツ演劇)。東京外国語大学教授。現在、東京外国語大学名誉教授。

≪『三文オペラ』のミラクル ≫ への謎解きと ピッコロシアター 松本修演出『三文オペラ』

≪『三文オペラ』のミラクル ≫ への謎解きと ピッコロシアター 松本修演出『三文オペラ』 気が付くと、もう半年以上も過ぎてしまっています。 兵庫県立芸術文化センター、阪急中ホールで、第75回公演、ピッコロシアタープロデユースとしてブレヒト作/『三文…

「くにたちオペラ『あの町は今日もお祭り』」と『鬼の学校』 ~多和田葉子と平野一郎と舘野泉~

「くにたちオペラ『あの町は今日もお祭り』」と『鬼の学校』 ~多和田葉子と平野一郎と舘野泉~ 多和田葉子台本+平野一郎作曲+川口智子演出*斎藤かおり制作の「くにたちオペラ」についてはすでにブログアップしたつもりでした。上演は今年2022年のGW(4/3…

「佇まいの美学――詩集『流転』に寄せて」

残暑お見舞い申し上げます! あっという間に時が過ぎていきます。すでに7月も終わり近く、本来なら、夏休みでしょうか。 梅雨が開けたのか、まだ残り梅雨なのか、毎日の寒暖の差も激しく、薄寒いと思った日に熱中症の予告、コロナ禍も3年目にして第7波に…

 Guten Rutsch ins neue Jahr  2022 !!

ドイツ語でRutsch は滑ること、よい新年に無事に滑り込んでね、つまり「良いお年を」という年賀挨拶なのですが、それをブログアップしようと思っているうちに滑りすぎて、滑り込みセーフもとっくに儘ならなくなりましたが、1月はあっという間に行き、2月は逃…

多和田葉子の演劇:『夜ヒカル鶴の仮面』劇場実験&フォーラム

気が付くと…今はもう秋⁈ 私の好きな夏はいつやってきていつ去ったのか? 時や季節の移ろいに鈍くなるのは老いの兆候でしょうが、この地球の季節時計も老いたのか、寒暖の差も、雨風模様も、気候変動も、ついには地殻変動の地震もあちこちで頻発して、地球の…

TMP(多和田/ミュラー・プロジェクト)の現在とこれからの展開

いまだ先の読めないコロナ禍状況ですが、それでもできることをこの間に頑張って探って、ご承知のように2冊の多和田演劇本を上梓しました。 1冊目は2020年10月に東京外語大出版会から刊行された『多和田葉子/ハイナー・ミュラー 演劇表象の現場』。この本…

SPACの宮城聰演出の『ハムレット』、もろもろ

今年2月初め、思い立って新幹線日帰りで、初めて宮城聰(1959~)演出の『ハムレット』を観に出かけた。『ハムレット』は宮城氏にとっても因縁の、縁の深い作品だということは聞いていたのだが、観る機会を逸していたからだ。 1990年に劇団「ク・ナウカ」を…

賀正 2021! 

祝刊行! 岡田蕗子著『岸田理生の劇世界~アングラから国境を超える演劇へ』 谷川道子+谷口幸代編『多和田葉子の〈演劇〉を読む』 まことに遅ればせながら、まずは賀正2021! 年賀状もそのお返事もままならないご無礼も久しいのですが、ともあれ新年の年賀…

『多和田葉子/ハイナー・ミュラー 〜演劇表象の現場〜』 ついに刊行!

2019年春に何とか始動したTMP(多和田/ミュラー・プロジェクト)。さまざまな探りやパフォーマンスをはさみつつ、コロナ禍の中断などもありながら、必死でここまでやって来れた。様々な方の援助を得る中で、その1年間の集大成としての思いを込めて、つい…

TMPとやなぎみわの『神話機械展 MM』終了

2018年に美術家やなぎみわから、学生たちの手作りのギリシア神話に基づく「神話機械」の中に、ハイナー・ミュラーの『メデアマテリアルMM』のテクストを中心にしたライブパフォーマンスを挟んだ展覧会「やなぎみわ展 神話機械」を2019年度一年かけて各地の…

「地点」という新しい地点 ~ Theatre E9 Kyoto でのTMP・HM上演に寄せて

日本にも遂にこういう演劇集団が登場したのかと、いつだったか感じ入った。どう新しいか。媚びないのである。観客に対して「わかって下さい」などと媚びない、退かない。だってこれが「演劇」なのだから。その点で彼らは本気の確信犯である。だからと言って…

TMPに連動するやなぎみわの半端ない『神話機械』

前書き:TMPをどう始動しようかと思案しているさなかに、やなぎみわさんから、ハイナー・ミュラーのテクストを使ったライブパフォーマンスを挟んだ『神話機械』というプロジェクトをやりたいというオファーが届いて、背中を押された。これが実質的にTM…

TMP=多和田/ミュラー・プロジェクト=始動!

このブログでも何度か仄めかしてきたようなTMP20192020=多和田・ミュラー・プロジェクトを、紆余曲折を経ながら、なんとかやっと始動します! HPにも載せたTMP設立宣言と重なりますが、以下に記します。 1977年に『ハムレットマシーン』が…

多和田葉子のカバレット『マヤコフスキー』とHM?                        

カバレット? 芥川賞作家の多和田葉子さんが、「カバレット」なるものの名パフォーマーでもあることをご存知ですか。メジャーシーンでは殆ど演じられていないのであまり知られていないのですが、これが絶品でお勧めなのです。 そも「カバレット」とは何なの…

『ハムレットマシーン』──2018、春    

「私はハムレットだった。 浜辺に立ち、寄せては砕ける波に向かって ああだこうだ(ブラーブラー)と喋っていた。廃墟のヨーロッパを背後にして。鐘の音が 国葬を告げていた。」 ―『ハムレットマシーン』第1景「家族のアルバム」 何故かこの春は、また、『…

鳥取の「鳥の劇場」の大人の『三文オペラ』

―地域と生活に根付きつつ、世界へ― 10年ぶりに雪の鳥取、「鳥の劇場」を再訪しました。拙著『演劇の未来形』でも紹介していますが、彼らとの付き合いもけっこう長くて深い。その続編を! 利賀村演出家コンクールでの出会い 劇団主宰者中島諒人さんたちとの初…

Alles Liebe und Gute fuer das neue Jahr 2018 !!  賀正!!

小正月も過ぎたのに今頃の年賀メールかとあきれておられるでしょうが、この恒例の遅れ年賀メールがないとブログが新年2018年になり替わりませんので、立春前の寒中見舞い代わりかと、ご容赦を! さすがに内容まで年賀モードは憚れますので、とりあえず先日観…

浪速のソーホーの関西弁の若者たちの「三文オペラ」

──演劇教育と公立劇場と地域のウイン・ウインの可能性を考える?── 近畿大学文芸学部芸術学科舞台芸術専攻の26期生の卒業公演に拙訳の『三文オペラ』をやりたいという依頼を松本修さんから頂いて、上演パンフに短文を依頼され、その一節―。 「演出の松本修先…

『フジタの白鳥』

もうひとつ、昨年の成果としてぜひともご紹介させていただきたいのは、佐野勝也著『フジタの白鳥―画家藤田嗣治の舞台美術』です。 2015年12月の東京外語大学付属図書館主催の公開講演会「演劇という文化」、その内容もこのブログに転載させてもらいましたが…

『メイエルホリドとブレヒトの演劇』

『メイエルホリドとブレヒトの演劇』 この間の2016年に力を注いだ仕事としては、『メイエルホリドとブレヒトの演劇』があります。ずっと抱えてきて、2016年11月に玉川大学出版部から上梓されました。内容と経緯については、その「訳者あとがき」に…

岸田理生と「リオフェス」のこと 

テアトロ エッセイ 2016年11月号 個有性と共有性のポリフォニー空間 ―岸田理生と「リオフェス」のこと 谷川道子 何故か、これまで『テアトロ』誌にはご縁がなかった。一九三四年創刊という日本演劇界の最老舗の演劇月刊誌――この厳しい出版状況のなかでの奮闘…

久しぶりにこのブログを再開します!

久しぶりにこのブログを再開します! 2016年1月の賀状を最後に中断していましたが、何度か書きかけながら、たとえば去年の「3・11」の日には障碍者劇団「態変」の公演『ルンタ(風の馬)――いい風を吹け』を座・高円寺に観に行って、その感想やらをい…

Blogを再開します。

谷川道子ブログを再開します。

Frohes und Friedliches Neues Jahr 2016 !!!

Frohes und Friedliches Neues Jahr 2016 !!! 本当に、あっという間に1年が過ぎて、2016年を迎えてしまいました。 加齢とともに時の歩みは加速度的に速くなるのでしょう。 それに反比例して対応はゆっくりとなり、特に手術後は賀状を書く集中力も弱まって一…

外語大図書館講演会「演劇という文化」

去る12月2日に、外語大図書館講演会として、私の講演「演劇という文化」が開催されました。前コラムのベルリン演劇祭のTT2015報告にも触れつつ、ドイツ演劇とその現在形が見えるような形でお話しましたので御笑覧いただきたく、講演原稿をアップさ…

「ベルリン演劇祭 =Theatertreffen2015報告」のこと

久し振りのブログです。この間、見知らぬ方から、このブログのファンだったのに、ずっと途切れたままなのでどうしたのかというあり難い問い合わせを頂きました。再開致します。ご覧いただければ幸せです。 実はこの間、まずは、5月1-18日開催の“The…

二十歳の若い力の『三文オペラ』!

気がつくと二月は逃げていて、今日から三月。花屋には桃と菜の花が並び、桜便りも、河津桜を皮切りに、聞こえ始めました。嬉しい春。三月は卒業の季節でもあります。あやかって桐朋の卒業公演のお話を―― 桐朋学園芸術短期大学演劇専攻の卒業公演で『三文オペ…

「近くて近い国へ」―― 日韓演劇交流のこと

一月下旬に、「韓国現代戯曲リーディング」というのに出かけました。 日韓演劇交流センターが正式に発足したのは二〇〇二年で、それから一三年間、日韓双方の地で、隔年で、こういった日韓「現代戯曲リーディング」の試みを重ねてきたという。 上演パンフの…

Prosit Neujahr 2015!

あけまして、新年、おめでとうございます。本ブログ、今年もよろしくお願い致します。最近は短縮して「あけおめ、ことよろ」と言うのだそうですが・・・・松の内も過ぎての新年のご挨拶で恐縮ですが、せめて節分までにと・・・・ 年末年始を掛川の実家で過ご…

「上質な知性がなくては、あんな民衆劇の喜劇は創れない!?」 

『喜劇だらけ~ネストロイの世界』 あの国技館のある両国の反対側のシアターXで、うずめ劇場第27回公演という『喜劇だらけ~オーストリア・コメディ、ネストロイの世界~』を観た。いろんなことを考えさせられたので、その関連でちょっとだけ。 ヨーハン…